as well as

『翻訳の布石と定石』を読んだ時の「気づき」について書いてみたいと思います。

今回は前回に引き続き、「as well as」についてです。

 
参照:
『翻訳の布石と定石』:(例文3C-17~3C20, p157-158)
翻訳の泉』:「第14回 and と or の話 」例文9の少し前

前回の記事の最後にふれたas well asについて、もう少しだけ書いてみたいと思います。

「A as well as B」といえば「BだけではなくAも」であり、「Bに対してAを強調したいときに使う」と、学校で最初に習うのではないかと思います。

でも、英日の翻訳チェックの仕事と翻訳の勉強を始めるようになってから、「A as well as B」が「AもBも」または「AならびにB」のように「and」として訳されているか、または「AだけでなくBも」というようにBに強調が置かれて訳されているのを頻繁に目にするようになりました

翻訳の現場では、この使い方が主流なのだろうかと疑問に思い、チェック対象の翻訳文やその他の英文での使われ方に注目しているところでした。

(補足ですが、和訳チェックの仕事の時には、andとして翻訳されていても、Bを強調しないと論理的におかしくなる場合以外には、修正やコメントを入れるようなことはしていません、もちろん。)

今回、和訳にしても英訳にしても、今後自分が翻訳をする上でどう考えていけばよいか整理をするつもりで、今回書いてみることにしました。


『翻訳の布石と定石』のp157に下記のような記載がありました

しかし、近年はandと類似の「AならびにB」といった意味でも使われています。以下の諸例は、後ろから訳したら変になり、前から訳すのが自然です。むしろ、この用法の方が多数派です。したがって、後ろから訳さないとおかしい場合以外は前から訳すのが妥当です。andの強調系と考えればよいでしょう。

まだそれほどたくさんの「A as well as B」文に出会ったわけではありませんが、たしかに「BだけではなくAも」と原則通りに訳されていたものは、ほとんどなかったように思います。

また、去年から今年にかけて受講したサンフレアアカデミーで受講した特許の通信講座のテキストにも

「~だけでなく・・・」とから後ろ訳し上げる表現もありますが、 前から「・・・ならびに~」というように、訳し下すことを試みましょう。

という記載がありました。
(『翻訳の布石と定石』の著者はサンフレアアカデミーの方なので、同じ内容の記載があるのは当然なのですが。)

その時の課題文は、「BだけでなくA」とするより「AならびにB」とした方が確かに自然だったし、そういうものなのであればそれに従っておこうと、「AならびにB」と訳して課題を提出しました。


英訳についても考えてみたいと思います。

先日担当した英訳のチェック案件に、たまたま該当する文が登場しました。
その案件では、「AもBも」という日本語に対して、「A as well as B」という英語をあてていました。
(この英訳を担当した翻訳者は、日本語の理解度も英訳の質もかなり高い、英語ネイティブの翻訳者でした。文脈的にも、比較してどちらかを強調するというわけでもなく、andとして訳しても、文脈的には問題ありませんでした。)

as well asの使い方は、日本人だけでなく、ネイティブも、並列的に使う人がいるということなのでしょうか。


ここで、少し調べてみました。

『ロイヤル英文法』(p722参照)には、下記のような記載がありました。

< A as well as B>: 「BだけでなくAも」
動詞はAに一致させる。

上記記載と例文2つの記載のみで、「AもBも」のようにandとして訳す例については記載がありませんでした。
「Aに対してBを強調する」というのは、やはり変わらないようです。

今度は辞書を見てみたいと思います。

Merriam-Websterの辞書には、

as well as  :  and in addition :  and brave as well as loyal

ここではas well as は and in additionだと言っています。
ということは、「〜も」追記している、=andということですね。

そして、American heritage Dictionaryでは

conj.
And in addition: courageous as well as strong.

Merriam-Webster同様、And in additionとされていますが、さらに「conj. (接続詞)」とはっきり書かれてています。

英語を書く上でも、andとして使うのが大分普及しているということなのでしょうか。

ただ、上記に挙げた『ロイヤル英文法』の記載にあるとおり、A as well as Bが主語に来る場合、「動詞の形はAに依存する」という記載があります。

原則に従うなら、Aが単数だった場合は動詞A as well as B is….となるわけですが、もし、A as well as Bを「AならびにB」と解釈するなら、動詞がAだけに依存するのは矛盾してしまうように思います。A as well as B areとし、もしA as well as Bを「AだけでなくBも」とするなら、動詞はBに依存するのが理に適っているのではないか・・・と思ってしまいます。

ただ、いろいろ調べていたら、「最近ではandとして並列に訳す場合は動詞は複数形にする場合もある」とどこかに書かれていました。(これがどこだったかメモを残していなかったため探せず、信憑性は定かではないのですが。)ますますよくわからないのですが、as well asの使い方に合わせて生じた変化なのでしょうか。

英文でA as well as Bが主語になる文に、なかなか出会えないので、チェック対象の翻訳やその他の英文で引き続き注目してみたいと思います。

和訳も英訳もA as well as Bはandとされる場合が多くあると書いてきたものの、『科学論文の英語用法百科』の著者のグレンパケットさんはas well asをandとして並列に訳すのは誤用としています。

私は『科学論文の英語用法百科 1』は持っていないので詳細はわからないのですが、パケットさんがエナゴ学術英語アカデミーの「パケット道場~初級アカデミック英語講座~」のコーナーでas well asについて説明されています。


長々と書いて来ましたが、

和訳については、当面の間は、原則的な訳し方を頭に入れた上で、「後ろから訳さないとおかしい場合以外は前から訳す」としてみようと思います。

「AだけでなくBも」というようにBに強調を置く訳し方は、文法的に考えると抵抗がありますので、そうしないとおかしい時以外(そんなときがあるかどうかわかりませんが)、しないでおこうと思います。

和訳を専門にされている方がas well as をどう扱っているのか知りたいです。
やはり文脈重視で最適な訳をあてるという感じでしょうか?

英訳については、主語にA as well as Bがくる場合は、それに続く動詞にも影響が出るので、今のところは原則に忠実に、「BだけでなくAも」としておきたいと思います。

もちろん、クライアントの都合や既存訳との兼ね合い、業界の慣習等(?)に合わせることが必要ではありますが、基本姿勢としては原則に忠実にしておき、もし「AもBも」、「AならびにBも」としたいなら、andを使っておこうと思います。


言葉は生き物なので、長い時間かけて誤用が正用となり、原則が変わることも多々あると思うのですが、少なくともどちらの使いかもみられる間は、指摘されたときに根拠になるもの(たとえば文法書など)を示せるよう、原則に従っておきたいと思います。

特に、英語は母国語でないので、どこから指摘が来ても自分の書いた文章が正しいと主張できるように基本に忠実に従っておくのが大切なのではないかと思いました。

as well asについては、引き続き注目していきたいと思います。

*この記事は2017年6月28日にアメブロに投稿した記事を再編集して掲載したものです。
元の投稿と同じ日付にしています。