先行詞を明示する訳出不要なthatとthose

前回の記事に書いた、『翻訳の布石と定石』を読んだ時の「気づき」について書いてみたいと思います。

今回は「先行詞を明示する訳出不要なthatとthose」についてです。

参照:
翻訳の布石と定石』:
例文2C-5, 2C-6, p101
翻訳の泉
」:「第7回 関係構文の話」例文8と例文9

この用法を、私は全く知りませんでした。例文2C-6については、初め、thoseは当然のように「それらの」と訳し、whichの前にカンマがあるのでwhichは前文全体を受けるものとして解釈してしてしまいました。すっかり「誤訳」のパターンにはまってしまいました。

解説を見てみると、このような記載がありました。

翻訳の布石と定石
先行詞を明示するために、指示形容詞that(複数形にはthose)が用いられることがあります。 (略)
指示形容詞that、thoseも限定用法にしか使われません。

翻訳の泉
先行詞をはっきりさせるため、先行詞の前に that / those を付けることができます。なおこのthat / thoseは関係節以外の修飾語句の修飾先を明示するのにも使われます。このことを知らずに「その」という訳語を入れてしまうとおかしくなります。

「この用法のthatとthoseは限定用法のみでしか使われない」というのもポイントで、カンマがあってもまどわされず、限定用法として訳さなくてはいけなかったわけです。

ところで、このthatとthoseの用法についてこれまで聞いた記憶がなかったので、手持ちの文法書『ロイヤル英文法』で改めて探してみました。

「関係代名詞」ではなく、「代名詞」の項目に記載がありました。

参照:
「ロイヤル英文法」
第4章 代名詞
第3節 指示代名詞
§94thatの注意すべき用法2. that which とthose who(p200~201)Lend me that camera (which) you boast of.
(君の自慢の例のカメラを貸してくれ)I keep only those books at hand which I want to read again.
(私はもう一度読みたい本だけ手元に置いておく)

The future of a nation depends upon those young people who are sound in
mind and body.
(国の将来は心身共に健全な若者にかかっている。)

*that [those]を日本語の「それ、その」と訳さないことに注意。

ここですね。

かなりあっさりとした説明ですね。辞書には説明があるのか?
手持ちの辞書DF-X10001で調べてみました。

結果、ランダムハウス英和大辞典、研究社新英和大辞典には記載がなく、記載があったのはジーニアス英和大辞典のみでした。

参照:『ジーニアス英和大辞典』

[後方照応的][that A which [who] …]
(正式)(…する(ところの))あの))A、(…する)そんなA)

<この場合のthatは指示性が弱く、関係節が続くことを示す;複数形はthose A’s which

[who]・・・>

例文:
She smiled with that look of motherly tenderness which is natural to all
women.
すべての女性に備わっている母性的なやさしさを顔に表して彼女はにっこり笑った。

Who was  that man I say your with last night?
昨夜お見かけしたとき、あなたとご一緒だった方はどなたですか?

もっと説明がほしい・・。

今後この用法が英文で使われるのを見たときに、that/thoseを訳さないように、そして関係節の訳仕方を気を付けることはできるけど、自分が英文を書くときに、このthat/thoseの用法をうまく使えるか。
どんな時にthatやthoseをつけるのか、どんな時はつけないのか。

そのあたりをもっと知りたいですが、ひとまず先行詞がすぐわかる文ではなく修飾句が長々とついたりする場合や、あるいは関係代名詞が省略されている文章のように、違う受け取り方ができてしまう場合に先行詞はここだよ・・と明示するものなのだ、という認識でいます。

自分で使うことは当分はなさそうだけれど、この用法はきちんと押さえておいて、少なくともまずは和訳の時に間違えないようにしたいと思います。
そして、翻訳の中で実際にどう使われているか、英文チェックの時の検証ポイントとして注目してみたいと思います。

まとめ

  •  先行詞につくthatやthoseは、先行詞を明示するものであり、訳さない場合もある。
  • この場合の関係代名詞は、たとえカンマがあっても、限定用法としてして訳す。

*この記事は2017年6月14日にアメブロに投稿した記事を再編集して掲載したものです。
元の投稿と同じ日付にしています。