in turnと関係代名詞, whichが示すもの

前回の記事に書いた、『翻訳の布石と定石』を読んだ時の「気づき」について書いてみたいと思います。

「気づき」というよりも、単に「これまで知らなかったこと」なのですが、私の中では大きな収穫で、普通に文法書を読んでいるだけでは多分知らずに終わってしまっていたものだと思います。
今回はまずそのうちの1つめについて。

『翻訳の布石と定石』の例文を直接載せるのは良くないと思うので、該当ページ数と例文番号を書いておきます。
書籍をお持ちの方は、是非確認してみてください。

参照:
『翻訳の布石と定石』:例文1A-16, p17
翻訳の泉」:「第7回 関係構文の話」例文5

ここのポイントは、「whichが指すもの(先行詞)が何か」ということ。

同じテーマでも、『翻訳の泉』の例文の方が簡単で、簡単なだけに間違いようがなく、読んだ当時はさらりと読み流してしまっていました。
そのせいもあり、今回同じポイントの文が出てきたときに『翻訳の泉』に書かれていたことを生かせなかったわけですが・・。

『翻訳の布石と定石』の文章は、もう少し複雑で、whichが前文全体を指すのか、それとも前の名詞(句)を指すのかにより、訳が全く違ったものになります。

その前にまず、「in turn」について。
これまで「順番に」、「その後で」とか「次に」くらいな感じでしか頭に入っていなかったので、当然のようにin turnを「今度は」と訳出してしまいました。なぜ訳が出てこないのか?まずはそれがわかりませんでした。

そして、「whichが指すもの」について。
私は例文1A-16のwhichは、カンマの前の文全体を受けているものと解釈してしまいました。

結果、正解の訳とは違うものになってしまったわけですが、なぜ自分の訳が正しくないのか、なぜ正解訳が正しいのかがどうしてもわからず、しまいには、「この訳例、間違っているのでは?」とまで思ってしまったほどです。(恐ろしい・・。)

例文1A-17についても同様に、不自然な訳文例の通りの訳をしてしまい、どうしても納得がいかず、正しいとされている訳例を「正しい」と思えるまでに、かなりの時間を要しました。

例文の下には、下記のような記載がありました。

in turnは主語の直後、動詞の前にある場合、前の文と主語が変わることを明示する目印として使われる。辞書にある「順番に」などの意味になるのは、動詞の後に置かれた場合。

さらに、whichが受けているのは前文全体ではなく、前の句だと解釈できる理由が内容を追って説明されているものの、この時点ではまだ正しい訳には到達できないでいました。

in turnの訳出とwhichが前文全体を受けているのではないことに、もっと納得のいく説明がないか・・。たとえ知らない分野の内容でも、正しい訳をできるように、何かもう少し手がかりはないのか・・。

そこで、もう一度『翻訳の泉』を振り返ってみると、例文5のあたりに、下記のような記載がありました。

関係節中に in turn や then がある場合は、付加用法であるのが普通です。 in turn は主題が転換したことを示し、「話し換わって」と言うニュアンスですが、特に訳さなくとも「は」で表現できるのが普通です。

なるほど、in turnで主題が転換したことを明示するだけで、訳さなくても「は」で表現できるのか!
関係節中に in turn や then があると、付加用法であるのが普通なのか!

ようやく納得がいきました。

「付加用法」とは、whichは先行詞を補足説明するもの、=非制限用法ということ。要するに、whichとin turnやthenが一緒に出てきた場合は、whichは前文を受けるのではなくて、先行詞を補足的に説明するものだということ
つまり、今回の例文のwhichは前文を受けるものにはなり得ないということ。

もう一度例文1A-16と例文1A-17を読んでから正解訳を見ると、納得がいきました。

in turnと関係代名詞の関係を知っていれば、whichが指すものが前文全体にはないことがすぐわかったでしょうし、もしその分野の知識がもっとあったとしたら、in turnのことを知らなくても、自分の訳が理論的におかしくなっていることが分かっていたはず。
どちらもできなかったので、まずかったですね。
これが仕事だったらと思うと、ヒヤリとします。

辞書や文法書を調べましたが、このin turnと関係代名詞については、特に説明を見つけられませんでした。

今回これだけ悩んだので、もう忘れません。
今度出てきたら、正しく解釈できると思います。

関係節中にin turn や thenが登場したら、こう考えましょう。

・主題転換のしるし。得に訳さなくても連用形や「~が」でつなぐ
・which以下は前文を受けるものではなく、付加的な説明をするもの。

ところで、前の文章を受けるwhichですが、実は前から気になっています。

whichが前文全体を受けるのか、先行詞を受けるのかの判断基準は、上記2つのように、今回のように「知らないとわからない」場合を除けば、基本的には内容で判断することになります。

例えば

He deleted the file, which made me very angry.

説明するまでもありませんが、この場合、「, which」の前にthe fileという名詞がありますが、「私を怒らせたのは」「そのファイル」ではなくて「そのファイルを削除したこと」 なので、whichが前文の内容を受けているということに、迷うことはありません。

また、たとえば

Jack said he was sick, which was not true.

この場合も、, whichの前に先行詞がないので、whichが前文の内容を受けているとすぐにわかります。

ただ、前文の内容が複雑だったり長かったりすると(1A-16や1A-17のように)、先行詞にあたるのがどれなのか、それともwhichは前文全体を受けるのか、判断がづきづらいことが出てくるように思います。
実際に英文を書いているときにも、文章全体を示したいのに、直前の名詞だけを示していると受け取られてしまう、または、その逆に直前の名詞だけを示したいのに、文章全体と受け取られてしまうのではないかと思う場合が時々あります。
(その時に和文英文共に控えておけばよかったのですが、ちょっと今すぐは思いつきません。)

現時点では、意図していないように受け取られるそうな気がしたら、私は前文を受けるwhichをどうしても使わなくてはいけないことがない限り使わないようにしています。(そういう場合があるかどうかはわかりませんが。)

whichの解釈に迷う例文が思いつかないので全然参考にはならないのですが、たとえば・・・

  • 文全体を受ける場合には関係代名詞を使わず、接続詞と代名詞を使ってつなぐ。
    Jack said he was sick, which was not true.
    ⇒Jack said he was sick, but that was not true.とか
  • あるいは、文末を分詞を使って書く。
    The typhoon hit the city, which caused great damage.
    ⇒The typhoon hit the city, causing great damage.

といった感じにしています。

新聞等の英文を読んでいて、whichが何を指すかを迷ったことが思い出せないくらいなので、書く側も気を付けて書いているのかなあと思ったりもしています。
英訳をやっている翻訳者の方は、意識されていたりするのでしょうか?

この他にも、関係代名詞については2点ほど気になっていることがあり、チェックの仕事の際に、翻訳者の関係代名詞についての扱いかた等、注目しているところですが、残念ながら、自分なりに推測できるほど、そのような文章には遭遇できていません。)

長くなってしまったので、気になる2点については、また別に改めて書きたいと思います。

*この記事は2017年6月13日にアメブロに投稿した記事を再編集して掲載したものです。
元の投稿と同じ日付にしています。